鳥肌が立つぐらいに興奮しました。
16日の夜はテレビ漬けでした。女子バレーボールから始まり、女子ビーチバレーに男子ゴルフ…。
そしてメーンは世界陸上。昔からほかのスポーツを見ることが大好きなんです。
疲れを忘れさせてくれます。テレビに夢中で気がつけば日が昇っていました。その中でも早朝5時過ぎにボクの興奮が最高潮に達しました。注目は男子100メートル。とにかくすごかった。そう、ボルトの走りです。世界新記録で優勝。9秒58のタイムを見たときは驚きで言葉を失いました。
そしてボルトの笑顔を見て思い出しました。それは確か2年前の大会。ボルトはタイソン・ゲイに敗れました。力負けを喫した後の記者会見で見せた悔しそうな表情。その表情の奥に秘めた「いつかは逆転してやる」という思いが伝わりました。計り知れない屈辱をバネに北京五輪では優勝しました。肉離れを押して強行出場したタイソン・ゲイは準決勝で敗退。そのときはタイソン・ゲイが涙を流していました。すべてドラマです。
人間模様というかスポーツの素晴らしさというか。すごい努力を重ねてたどり着いた舞台。種目は違いますが同じアスリートとしてプラスになる部分や刺激になる部分も多いです。100メートルだけじゃなく他の競技を見て心を打たれることや何かを感じる部分があります。それがボクのパワーになっています。
ボク自身も1軍に帰って来ることができました。しかし今回の離脱は心が折れそうになりました。体の調子やチーム状態が上がってきた矢先のケガでした。命でもある足を負傷してショックでしたし、最初は歩くことも困難でした。今年は「戻れないんじゃないか」とかいろいろなことを考えました。不安や葛藤(かっとう)があったので、リハビリを開始したときに思い切った事を言いました。「すぐに戻ります!」。それは心が折らないための言葉でした。
1軍に復帰した後も「本当の姿」を見せられるか。それも不安でした。怖さもありました。その中で復帰直後に盗塁を決められたのは良かったです。チームも巨人戦で長期ロード初の勝ち越し。ただ、巨人に勝って、横浜に負けてもいいわけではありません。どこが相手でも勝たなければいけません。残り44試合。上位に進むためには一つでも多く勝つ必要があります。最後まであきらめない。それは当然のこと。それを期待してファンの方も球場に見てきてくれています。やるしかない。明日からも勝ち続けるしか道はありません。
(阪神タイガース外野手) 協力オフィスS.I.C
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